「しばらくは専門の内科の診察をしながら、父の下で耳鼻咽喉科の勉強をして、父が引退する3年後に耳鼻咽喉科も専門で診ていきたい。」設計のはじまりは、そんな要望からでした。
築30年の約100㎡の診療所の改修。内科スペースとX線室を新たに設けるため、これまであった収納スペースが不足するということになり、約11mの収納家具を診療所の中心に据えることにしました。
収納家具により、診療所は3年後に再び改修可能な可変スペースと改修しない固定スペースに仕切られています。
また、この家具は収納であり、テレビ台でもあり、カルテ棚でもあり、本棚でもあり、間仕切りでもあり、空間的にも機能的にも診療所の中心的な存在となっています。
その収納家具の表面には異なる色のオークの突板(薄い化粧板)をバーコード状に貼り分けています。このバーコードは医院の名前を変換したもので、幾何学模様でありながら、固有のデザインとなっています。
地域に密着した診療所では、親から子へと受け継がれていくケースが多くあります。そんな親から子へと受け継ぐ、この診療所に刻み込んだデザインが、診療所のアイデンティティになることを期待しています。