依頼主夫婦にとっては失意のスタートでした。住宅のプランまで決定した敷地を、他の方に先を越され、敷地の購入がかなわなかったのです。
その約一ヶ月後、依頼主から気にいった敷地があるとの連絡。その敷地は、古くからの集落のなかに開発された想像を超えた旗竿地。60mものアプローチがあり、その先に広がる風景を臨む敷地だったのです。当初の計画よりも魅力的な、この環境を活かした住宅を創りたいという思いとともに、設計を再スタートさせました。
この敷地で考えたことは3つ。「車の展開スペースを確保」すること、「景色をフレーミング」すること、「地域の風景とシンクロ」すること。そのコンセプトのもと、依頼主と共に、間取りや材料にいたるまで一緒に悩み、できることは自分たちで施工しました。
そのように建てた住宅は、敷地環境を最大限に生かした、依頼主にとって最高の住宅になったのではと思います。
失意のスタートは、じつは幸運のはじまりだったのかもしれません。