現場で溢れてくるもの

高校以来の友人の住宅の土地探しで豊田市へ。
事前にもらっていた候補地の資料に第一種中高層住居専用地域とあったので、
住宅が建て詰まっているのかと思いきや以外にゆとりのある敷地。
同じ用途地域でも大阪周辺なんかの雰囲気とは全く違いますね。

土地のゆとり以外にも現場に行くと色々な環境面等の条件が見えてくる。
その条件が設計の手掛かりとして新たなイメージも溢れてくる。
同時に何もないキャンパスに絵を書き出すことの大きな期待と責任感も。
まだ土地は未決定ではあるが、友人夫婦にとって最高の住宅になるように頑張ろう!!

管理建築士講習

昨日管理建築士講習を受けてきました。

耐震偽装事件以降の法改正で
設計事務所を管理する管理建築士の職務倫理等を指導する講習会。
ごく当たり前な建築倫理から、事務所の運営方法、少し現実離れした設計報酬等
多岐に渡る御指導を賜りました。

普段自ら学ぶことはあっても、習うということに慣れていないこともあって、
休憩を挟んでの8時間の講習は通常の設計業務の何倍も疲れました。

速度によって得られるものと失うもの

お世話になっている方の実家を改修するということで、車で鳥取市へ。
今回は改修の設計監修ということで、コンサル的な役割。
学生時代に実家の離れの改修設計をさせて頂いたということもあり、
10年振りの訪問。
10年前には中国佐山インターより先は、中国山脈を縦断する地道だったのが、
今は鳥取道という新しい高速道路ができていた。
往路は何の気もなしに高速道路にのり、快調に現地に到着したものの
山間の高速道路にありがちな風景を走り過ぎていくことに何となく味気ない気がした。
復路は時間にも少し余裕があったので地道で。
10年前に車で通いなれた川沿いの道を走る。
川の風景が上流に行くほどに水量が減り、荒さが増してくる。
そして川の流れが日本海側に流れているのが、
途中で瀬戸内海側に切り替わることに気付く。
気温が低いせいため、山の所々で山桜が咲いており、
途中の集落では桜並木が満開。

高速で走ることで得られるものと失うものがあることを改めて実感。
時にはゆっくりとしたり、立ち止まることも大事ですね。

未知のヴォキャブラリー

久しぶりに定期購読以外の建築の洋書を購入。
Vincent Van Duysen
ほとんど知らなかったベルギーの建築家の作品集。

自らを”material man”と称することに思わず頷いてしまう程
素材とその質感を空間の質へと昇華している。
ミニマルでありながら、素材の使い方で実に豊かな空間を創りだしている。

単純な空間の構成でありながら、計算された素材の使い方とディテール。
自分の中にない建築的ヴォキャブラリーが創作意欲を刺激する。
いい買い物をしました。

青森建築旅行

 某コンペ締め切り一週間前、

3月28日~30日に2泊3日の青森建築旅行へ。

弘前市を拠点に、昨今の話題作である十和田市現代美術館と青森県立美術館、

弘前市に点在する近代建築の巨匠前川圀男の建築を巡る旅。

下記は、多忙にかまけてほったらかしていた青森建築レビュー。


十和田市現代美術館 設計:西沢立衛 2008年

最初に訪れた十和田市現代美術館でテンションはいきなりピークに!

官庁通りにアート作品が点在し、その街並みの中に美術館が佇んでいる。

西沢氏の過去作である金沢の21世紀美術館との規模の差はあるものの、

まちや市民への開放性とスケール感は同様にすばらしい。

一地方都市での現代美術館のあり方を示すようなアートと建築によるまちづくり。




財団法人木村産業研究所 設計:前川圀男 1932年

ル・コルビュジエの事務所から帰国後に手掛けた初期作。

端正な佇まいの中に、ル・コルビュジエの影響と感じられるディテールや色使い。

この作品が前川圀男26歳のものと聞き、少しへこみ気味に。




弘前市役所 設計:前川圀男 1958年

これまで見たことのある京都会館や国立国会図書館等と同時期の36歳での作品。

現在も現役の弘前市役所として活躍。

市役所として雑多になっている部分はあるものの、

外観や内部の要所に前川建築にある力強さと繊細さを感じることができました。



弘前市市民会館 設計:前川圀男 1964年

壁式構造による構成が外部だけでなく内部にも現れているのがすごく印象的な作品。

構造のピッチに変化を与えたり、壁式のシステムを守りながら壁面を曲げたりすることで

単調な印象を払拭し、変化に富んだエレベーションと内部空間を創り上げている。

近代建築の合理性だけでなく遊び心のようなものを併せもつ魅力的な建築でした。




弘前市葬祭場 設計:前川圀男 1983年

前川圀男の晩年の作品。

天井から差し込む光とその光を受ける素材の関係により、

緊張感のようなものが張りつめた空間。

これまでの空間体験で例えるとオランダにある

アルド・ファン・アイクのローマ・カトリック教会のそれに近い。

このような何とも例えにくい緊張感は熟練によるものなのか。

まだ見ぬロンシャンの礼拝堂やラ・トゥーレットの礼拝堂に、

無性に行ってみたくなりました


青森県立美術館 設計:青木淳 2006年

就職したての頃に話題になった国際コンペによるもので、ずっと見たかった作品。

地下にトレンチ(溝)を掘削し、その上に真っ白い構築物を被せるという構成。

地下の展示空間は建築空間というより、土木の空間のイメージ。

真っ白い建築による繊細な構築物と掘削された粗雑な地盤の組み合わせが、

これまでにない新しい空間を創り出しており、非常に興味深い体験でした。

ただ繊細な建築による構築物のディテールが

土木的な粗雑さを意識したものなのかという疑問は残りましたが・・・。





3日の中で10近くの現代建築と近代建築をまわり、少し消化不良気味。

これからじっくり、実務なんかを通して消化していければと思います。

地方を巡ると郷土料理をたべるのも醍醐味ですね。

2泊とも夜は酒盛りでした。


 

 

設計と現場の微妙な誤差

東大阪の住宅の現場にて、
仕上げ材料の色(素材の色や質感等)決めの打ち合わせ。
鉄骨階段のフレームも取り付き、
空間のイメージも大分明確になってくる。
設計段階で図面や模型、パース等によって、
空間のスケール感や光の入り方等を検証するものの
図面や模型には縮尺、パースにはひずみがあり、
実際の空間のイメージとは異なる。
そのため設計段階での空間イメージと現場での空間イメージに
多少の誤差が出てくることはよくあります。

素材の色相、明度、彩度、質感等は
空間のスケール感や光の入り方に大きく左右するため、
色決めとは設計と現場の誤差を修正する一つの手段となります。
このような作業は工程に影響があるため
短時間で検討と決定を求められる作業であり、
非常にライブ感を感じる瞬間でもあります。

最近はこのライブ感が現場監理の醍醐味かなと感じています。

まちと建築のゆとり

朝からバスと徒歩を駆使して北摂巡り。
豊中の住宅の地盤調査→豊中市役所→豊中の住宅の現場→吹田の敷地の現地調査

北摂に住む人がそこを離れたがらないという話をよく聞きますが、
歩いてみるとその理由がとてもよくわかります。
とにかくオープンスペースと緑が多くて、街全体に光がふりそそぎ、風が通り抜ける。
ニュータウン開発時の40年前にそのゆとりを計画し、成熟してきた結果であろう。

機能性や間取りが重視されがちになることも多いですが、
この街と同様に、建築においても光や風といったゆとりは何ものにもかえがたいと再認識。
忙しく動き回った割りに心地いい半日を過ごすことができました。

建方

 昨日と本日で建方工事。
これまでの基礎・土台といった地上80センチまでの工事から一転
2日で一気に7メートルを超えたヴォリュームが建ち上がる。

これまでの図面や模型での1/100や1/50といった縮尺をかけたイメージから
1分の1のスケールへ転換。
建方は各種工事の中で最も興奮する瞬間だと感じる。

建築の手垢

 東大阪の家の配筋検査ののち、南港にあるプレカット工場での打ち合わせへ。
担当者にお願いして、プレカット工場を見学させてもらいました。
一瞬で機械が梁の端部や側面にオスとメスの仕口を切り出していく。
柱や梁の仕口だけでなく、床下地の合板の柱との取り合いの切り欠きまで、
CADで入力したとおりに切り出され、部材名が刻印されている。
小さな家の一棟分であれば、4~5時間で部材が完成するそうです。
機械の効率性と正確性に感動。


と同時に手作業ない無機質な感じに寂しさも少しありました。
また昔は南港に多くあった製材所も今では輸入品に押されて少なくなっており、
海に大量の原木を浮かべているという製材所の風景も10数年前にはなくなったそうです。

プレカット主流の時代にノスタルジーに浸るというのも少し近視眼的かとも思いますが、
建築には、どこかに手作業による手垢のような優しさがあるのがいいなと感じました。

東大阪の家 着工

 明日より東大阪で計画中の住宅が着工します。

6月中旬完成予定。
現場でのひと踏ん張りが大事だと信じ、がんばっていきます。

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